私が住んでいる小さな田舎の集落では、みんながまるで家族のように生活しています。
お隣とは離れているにもかかわらず、残業で帰宅が遅かったことも、出張で留守にしたことも、友達が遊びにきたことも、家庭菜園で作っている野菜の種類も、み~んなお見通しです。そして、誰かが亡くなると、夜中でも、職場で会議中でもお構いなしに電話で集合の号令がかかります。そして、仕事を休んでお葬式の手伝いをしなければなりません。
大抵のことは、郷に入っては郷に従え、でつつがなく済みますが、かなり価値観や習慣が違う部分もあって気を遣うこともあります。
田舎暮らしとここの美しい景色にあこがれて移り住んだ私たちを、集落の皆さんはとても暖かく迎えてくださいました。私たちも早くその仲間として溶け込みたいし、ましてやこの共同体の和を乱すわけにはいきません。
それで実は、車にお金をかけていることがバレルのは、心苦しい気がしていました。といいますのも、この地域の人々は、お金に余裕ができると自分のために使わず、集落のために寄付をなさったりしますから・・・。
悪いことをしているわけではないのですが、それに、了見の狭い人たちではないと思うのですが、車の名前や値段を聞かれたらどうしようと、ちょっとヒヤヒヤしていました。
しかし、これまで私の車がどこの車なのか解る人はいなかったようです。
ある日、みかんの収穫のお手伝いに行った時、いつもとてもお世話になっているTさんから、
「前の車もまだ新しかったとに、買い換えたとねー。どこの車?」「屋根が開くもんね」との問いかけが。
すかさず、これまたいつも親切なSさんが、
「ユーノスじゃろ?」と。
「えっ、えー・・・」ポルシェのボクスターと言っても多分よくわからないだろうし、ポルシェというメーカーを知っていても、べらぼうに高い車だと勘違いされても困るし・・・と、返事に窮していたら、
「あ~、マツダのね!」とTさん。「そうじゃろ」「そうじゃろ」
皆さん勝手に、ユーノスということで納得していました。
あえて反論する必要もないですし。そういうわけで、私のボクスターは「ユーノス」という名前になりました(笑)。